レブロ活用事例

BIMモデル通りに納まったダクトや配管

あるオフィスビルの建設プロジェクトの設計、 施工をBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)で 行った清水建設株式会社関東支店は、構造部材をあらかじめ避けて設備計画を行う「造り込み型設計」を行った後、 設備の施工に移りました。果たして、現場の業務は従来の方法からどう変わったのでしょうか。 プロジェクトを担当した関東支店生産支援部 生産支援グループ長の藤咲雅巳氏に、 施工業務の実際と、完成後の保全業務におけるBIM活用についてうかがいました。

事前の数量計算と専門工事会社の積算がほぼ一致

施工段階での原価管理で重要なのは、専門工事会社と早期に工事内容を合意し、 契約することで、設備部材の数量はその根拠となります。 「レブロで作成した設備のBIMモデルには、ダクトや配管から貫通部のスリーブ、バルブなどに詳細な属性情報が付いており、自動的に数量計算を行えます。 例えば、角ダクトの板厚毎の㎡数や口径別の配管長・バルブ個数などの集計は、 非常に高精度で行えました」と藤咲氏は振り返ります。
「BIMモデルから自動集計した数量と専門工事会社が積算で提出してきた数量を比較してみたところ、 ほぼ一致していました。BIMモデルの属性情報は、 設計段階のコストスタディーや専門工事会社の見積内訳の妥当性を検証するためにも大いに役立ちます」(藤咲氏)。
スリーブなどの部材は、現場によっては数万個も必要なことがあります。 施工中に足りなくなると作業に手待ちが生じてしまうことがあるため、 多めに発注する必要がありますが、逆に多すぎるとコストロストにもつながります。 BIMの属性情報を活用した自動数量積算で、必要十分な個数を発注することができました。 このことは、建築工事における補強部材の拾い出しも同時に行われていることになります。

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今回の東日本大震災では、各地の建物で天井が落下し、大きな被害が発生しました。 内装材である天井では、これまで本格的な耐震性の検討は、天井のふところの条件により行われておりました。 しかし、今後は地震時の横揺れを防ぐため、斜材などを取り付けることが重要となります。
「今後は天井の耐震対策が必要になるでしょう。 斜材がさらに追加されることで、 ただでさえ狭い天井裏の空間は、設備と吊り部材との干渉が今以上に多くなります。 あらかじめ干渉を避けた設計をBIMで行い施工品質が確保されることはもちろん、 正確な数量を集計しておくことで、吊り部材や吊りアンカーを無駄なく発注できるでしょう。 以前では設備CADにそこまで求めることは無理がありましたが、 レブロというツールがその可能性を感じさせてくれました」と藤咲氏は語ります。

配管やダクトをあらかじめ色分けした施工図

複雑に入り組んだダクトや配管を正確に施工するためには、分かりやすい施工図が必要です。これまではモノクロで印刷した施工図を色鉛筆などを使ってダクトや配管の種類ごとに色塗りすることにより見やすくしていました。
「せっかくBIMを使って設計するのなら、大判カラープリンターが普及している今、使うことで手間が省けると思いました」という藤咲氏。あらかじめ設備ごとに色分けされた図面をカラーで出力。さらに施工図の片隅に細部の納まりを立体画像で表した3次元パースや施工管理基準の図などを貼り付けました。

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BIMモデルのダクト、配管がそのまま実物に

あらかじめ「造り込み型設計」で意匠や構造部材と設備の干渉を解決した設計を行っていたため、着工後の設計調整はほとんど必要なくなりました。その結果、専門工事会社は、現場での施工作業に専念できました。施工時の問題を設計段階で解決しておく「フロントローディング」の効果で、手戻りがなくなったため、現場の生産性は大いに高まりました。
「隠ぺい部の施工が終わった後、BIMモデルと実物のダクトや配管を見比べてみると、BIMモデルがそのまま実物に置き換わったかのようでした。各設備が設計通りに納まり、手戻りが発生したような形跡がほとんど見当たりません」と藤咲氏は語ります。 その状況は、図面、CGパース、施工写真を見比べてみるとよく分かります。

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BIMモデルによる「造り込み型設計」は、次のステップとして「ものづくり」につながります。
これらは、設備でのプレハブ化やモジュール化を可能とします。工場製作をすることで、 品質(Q)、コスト(C)、工期(D)、安全(S)、そして残材の減少などにより環境(E)のすべてが向上できそうです。レブロには、配管加工機能が実装されているのでこれから機械室のユニットなどで搬入計画(4D)を 含めたBIMならではの専門業者とのコラボレーションが期待されます。
2011年2月にプロジェクトの竣工を見届けた藤咲氏は、「これは、建設業におけるプロセスイノベーションの一歩です」と語った。

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建設会社の保全ビジネスにも活用できるBIMモデル

「竣工時のBIMモデルの属性情報に、施工中の写真や機器情報や修補情報をひも付けておくことで、病院の『カルテ』のような資料として、将来の保全業務に有効利用できそうです。壁や天井、床下に隠れてしまう設備だからこそ、実物同様の設備の位置や内容を記録したBIMモデルは役に立ちます。 不具合があったときはすぐに対応できるでしょう」と藤咲氏は保全業務へのBIMモデルの活用を展望します。
建物が誕生してから運用期間を経て解体されるまでのライフサイクルコストに占める建設費の割合は2~3割で、残りの7~8割は運用や維持管理などにかかる費用と言われています。 これまでの建設業は前者の部分だけでビジネスを行っていたと言っても過言ではありません。
BIMモデルを建物のカルテとして、完成後も保全業務を通じて施主とかかわりを持つことにより、 効率的な維持管理や大規模修繕、改築などが可能になります。壁や天井板の裏側にある各種機器や配管、ダクト、電線などの位置が分かります。 また、属性情報に施工年月やメーカーなどを記録しておくことで、故障時の対応もスムーズに行えます。長期修繕計画の時期やコストも属性情報を元に自動作成することも可能です。
つまり、竣工時のBIMモデルを保有することで、運用や維持管理段階での新しいビジネスチャンスが開けるのです。BIMモデルを活用した次世代のストックビジネスは、今後のこの業界にとって新しい成長戦略の一つとして重要な分野になりそうです。


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受注・設計編/施工・保全編PDFファイル(2.0MB)

CORPORATE PROFILE

清水建設株式会社

本社 東京都中央区京橋二丁目16番1号
代表者 代表取締役社長 井上 和幸
設立 1804年(文化元年)
資本金 743.65億円
従業員数 10,751人 2016年4月1日現在
事業概要 建築・土木等建設工事の請負(総合建設業)