『Archi Future 2015』展示会レポート

『Archi Future 2015』展示会

2015年10月23日(金)、東京・有明のTFTホールにて「Archi Future 2015」が開催されました。

今回で8回目を迎えたArchi Futureでしたが、当日は天候にも恵まれ、昨年同様ゼネコン、設計事務所、サブコンの皆さまに多数のご来場をいただきました。BIMの情報発信をする展示会として広く認知されていることもあり、来場者の質の高さと熱心さを今年も実感することとなりました。年々盛況さを増している本イベントですが、今年の来場者も4,000名を超え、2ブースで出展した当社の展示ブースにも、多数のお客さまにお立ち寄りいただきました。

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セミナー『「設備BIMには何ができるか?」

-設計と施工での実践型取り組みスタンスと3Dスキャナの可能性-』

当日は、レブロユーザーである株式会社竹中工務店 大阪本店 設計部 プロダクト部門 プロダクトグループ 端野篤隆様による『「設備BIMには何ができるか?」-設計と施工での実践型取り組みスタンスと3Dスキャナの可能性-』と題したセミナーが行われました。 セミナー会場は200名を超す参加者で満席となり、竹中工務店様のBIMへの取り組みに対する関心の高さが窺えます。

気になる講演内容ですが、「設備BIMには何ができるか?」から始まり、「設計での実践」、「施工での実践」、「BIM関連ツールの期待」と進み、「まとめ」となっておりました。

まず「設備BIMには何ができるか?」の部分では、設備BIMをどのように活用することで、どういったメリットがあるのかという点を解りやすくご説明されていました。端野様のお話しによると、設備BIMのメリットとして、3次元形状でリアルタイムに確認が行え、直感的で解りやすいという特徴があることや設備データベース情報としてのサイズや名称といった属性情報を活用することで図面作成・数量計算・解析など業務範囲も広がるとのことでした。

ただ、BIMへの取り組みにあたり問題となる部分として「設備系BIMは誰が作るの?」といった誰もが持つ疑問に対し、端野様は「それは、BIMに関わるあなた自身です」とお話しされていました。建築設計者や構造設計者、維持管理者など、立場ごとに積極的な取り組みを行うことで、効果的に活用できるものになります。更に、BIMを使う上で非常に大切なこととして、BIM教育の重要性についても触れられており、同社の社員に対する研修制度や社内体制についても紹介するなど、これからBIMを推進していく受講者の方々には非常に参考になる内容であったと思います。

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続いて「設備BIM 設計での実践」について、実際にBIMを活用するにあたっての問題点や運用方法など、同社で行っているプロジェクトの進め方の具体的な手法について、お話しされていました。設備BIMにおいては、建築プランの確定時期によって大きく成果物が左右されるため、計画段階から成果物の確認とスケジュールの管理を関係者間で情報共有することによって、BIMを有効活用できるとのことです。

建築プランの確定時期が遅くなれば、その分、空間的な設備の納まり検討をする時間が無くなるため、そういった問題を回避するために、BIM計画書をつくり「設備機器の配置計画」、「設備機器との干渉確認」、「施工スペースの検証」など、設備を「見える化」することにより、建築プランも固めやすくなります。同社では、あらかじめBIMの活用レベル基準(3DCAD活用レベル、部分BIMレベル、一気通貫BIMレベル)を定めており、それらを物件ごとに適用し、設備作図計画に基づいて設備BIM成果物の宣言を行うことにより、設備設計段階での成果物イメージを具体化しているとのことです。その結果として、従来は工事段階で発生していた調整業務を、設計段階にフロントローディングでき、調整作業の前倒しや整合性の確保に繋がっているようです。

そしてその調整作業においても、これまでは打合せ資料作成に多大な時間を費やしていたそうですが、重ね合わせソフトを活用することで必要な部分をBIMモデルから切り出し、建築・構造・設備の各担当者が確認会で課題の抽出を行うことができるため、本来の設計業務に取り組むことができるとのことでした。

その他、BIMソフトの活用例として、確認申請図や契約図の作成、設計段階のプレゼンテーションの有用性や積算業務における自動拾い出し機能の活用などについてお話しされていました。当社のレブロを用いた図面でご説明いただきましたが、レブロはモデルデータから2次元図面を切り出すことができるため、レブロで確認申請図を提出したという事例を紹介されていました。これまで2次元図面については、2次元CADで書き直して提出していたそうですが、そうしてしまうとBIMデータとしてはそこまでで終わってしまうため、現在は2次元CADで書き直さないことを徹底しているとのことでした。そして、モデルデータをCG表示できるCADを活用することで、プレゼンテーションの場で早期にお客さまとプロジェクト関係者で視覚的に情報共有できるため、プロの設計者と同じ目線で確認し、想いを共有できるとのことでした。

また、同社では、BIMソフトメーカーと連携し、鉄筋コンクリート構造のBIMモデル上で、梁にスリーブを挿入できる範囲を表示する新機能を開発し、設計作業を大幅に効率化するなど、BIMの使い勝手をより良くする取り組みをされており、現状に留まらない未来に向けた動きも取られているようです。

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そして、次の「設備BIM 施工での実践」については、BIMデータをどのように活用、運用していくかについてお話しされていました。施工においては、設計から施工への連携が重要なポイントとなるため、設計で作り込んだ方針をデータと共に引き継ぐことが、BIMを発展させるためには必要不可欠になります。設計者と施工者で打合せを重ね、設計データを使って施工図を作り、その際に見つかった問題を設計者にフィードバックするなど、コミュニケーションを活発にすることで、業務効率向上に繋がるとのことでした。その他、BIMデータの活用方法として、プレハブ化することで業務の効率化や安全性を高められることや、これまで書類として保管してきた竣工図書などをデータで管理することによってメンテナンス向上に繋がった実績など、CADのデータおよび機能を用いての作業効率化やFM領域でのBIM活用の可能性についてご紹介されていました。

そして、「BIM関連ツールの期待」として、3Dレーザースキャナの活用とその有用性について、同社で活用した事例をもとにお話しされていました。まず、3Dレーザースキャナでは、現場の状況を3Dデータにデジタル再現できること、そして、データの精度が高く、正確で、安全かつ調査にかかる時間が短いということがメリットとしてあるとのことでした。建物内設備の寸法を測るなどのデータとして使うだけではなく、今後の展開として、耐震の評価や現地の施工精度の確認、リニューアル計画の検討など、活用範囲は広がり、業務の効率化をより図れる期待ができるとお話しされていました。

「まとめ」として、今後より加速する設備BIMの活用は、建築業界にとって必須であり、プロジェクトの初期段階から、お客さまの課題解決に向き合うことができるようになっている状況を踏まえ、お客さまや協力会社と共に、価値あるものを創出したいという端野様の想いを述べられ、締めくくりとなりました。

セミナー全体を通して、同社が設備BIMにどのようなメリットを見出し、どのように活用しているかを解りやすくご解説いただきました。 当社にとっても非常に有意義なセミナーであったと感じました。 レブロも建築業界での設備BIM活用において、より貢献できる設備CADを目指して、新しい挑戦を続けたいと思います。

テクニカルフォーラム『連携強化で見えてくる設備BIMの将来像』

当日は、テクニカルフォーラムにて当社開発部の小倉が「連携強化で見えてくる設備BIMの将来像」をテーマに、今後のレブロの開発について講演いたしました。 まず、Autodesk Revit MEPとの連携についてご紹介しました。これまでRebro2015ではRevitで作図した建築モデルをレブロに取り込むアドインの機能を搭載しておりましたが、今回はRevit MEPで作図した設備モデルをレブロに取り込む機能を次バージョンで対応すべく開発しております。

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続いて、IFC GUID対応についてご紹介いたしました。 GUIDとはIFCのオブジェクトを一意に識別する方法のことをいいます。今回の開発ではそのGUIDに対応することで建築変更箇所を色分けして表示することができ、建築データの変更前と変更後を把握することができる機能となります。

次に、点群処理ソフト(InfiPoints)および積算見積ソフト(みつもりくん)との連携機能についてのご紹介です。現在、3Dレーザースキャナの利用拡大から、スキャンした点群データの設備CADでの利用が求められています。点群データを点群処理ソフトで加工し、レブロに取り込んで編集できる機能の開発を進めております。積算見積ソフトとの連携では、レブロの図面から拾い出したデータを積算見積ソフトへ引き継ぎ、見積書を自動作成できる機能を現在開発中です。

そして最後に、BIMパーツの取り組みとしてTOTO株式会社との協業、レブロのパラメトリック編集についてご紹介しました。

TOTO株式会社との協業については昨年のArchiFuture2014でも紹介させていただきましたが、2015年の2月からデータ提供を始め、10月末でちょうど100品目に至ります。もともとレブロはBIMパーツを自社で用意してきましたが、徐々にBIMパーツを提供するメーカーも出てきたことから、今回の対応ではメーカーの純正品ということが明確に解るようにメーカーロゴを表示するようにしました。その他、レブロのパラメトリック編集では頻繁に発生する設計変更に対して、修正の手間を軽減できるよう編集機能を見直しました。例えば、既に配置してあるパッケージエアコンの台数や機種、向きなどが変更になった場合でも、新しく作成した「再配置」コマンドにより、パッケージエアコンに繋がっている配管との接続を保持したまま変更ができるなど、これまでの修正作業を軽減できる機能になります。

これらの機能は、今後検証を重ね、開発を進めていく予定です。 当日は、最終のセミナーにも関わらず会場外にも立ち見の方が出てしまうほど関心が高く、多数のお客さまにご聴講いただきました。

あらためまして、テクニカルフォーラムにご参加いただいた皆さま、また、当社展示ブースにお立ち寄りいただきました皆さまには、厚く御礼を申し上げます。

ご来場、誠にありがとうございました。