Archi Future 2022 展示会レポート

「Archi Future 2022」開催

2022年10月28日(金)、東京・有明のTFTホールにて「Archi Future 2022」が開催されました。
今回で15回目を数える国内最大級のBIMイベント「Archi Future」は3年振りのリアル開催となり、 出展社は過去最高の39社、セミナーの講座数は前回の約1.7倍、テクニカルフォーラムの会場を4会場に拡大と、過去最大のスケールで開催されました。
行動制限が解除されてから初めての開催となりましたが、5,373人と前回とほぼ変わらない来場者があり、コロナ禍においても、BIMに対する関心の高さを感じました。

当社もレブロを製品出展し、非常に多くのお客さまにブースへご来場いただきました。

Archi Future 2022 受付

 

セミナー・講演会

セミナー『設計は「デジタルリレー」の時代へ』
―大学病院の設計における建築情報を部門間で活用した設備設計者の挑戦―

当日のセミナーではレブロユーザーである、株式会社日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループの浅川卓也氏が、大学病院の設計における、部門間の連携に関する事例を発表されました。
本セミナーは定員の220席が満席となり、非常に注目を集めたセミナーでした。

 

BIMとは、BI+M

BIMとは、「BuildingInformation」と「Model」の組み合わせで、Modelが意味する原型=図面となる建物情報(BI)を作ることが最も重要と捉え、デジタルリレーの根幹である”BI”を使い部門を超えて、いかに連携したか、実際のプロジェクトにおける取り組みについて紹介されていました。

これまで、設計情報のやりとりは大部分をアナログ作業で行っていたが、これからはBIMを使ったプラットフォーム作りが必要と考え、デジタルな設計情報を部門を越えてリレーができれば、部門間整合性の向上、技術計算の効率化にもつながるため取り組んだことが背景にある、とお話されました。

部門を越えたデジタルリレー

本プロジェクトでは意匠・構造はRevitを使用し、設備設計にはRevitとの親和性の高いレブロを使用し、意匠のモデルに設備のモデルを乗せたそうです。そうしてワンモデルで作成した、設備ヒアリングプロット図を利用し、同時編集作業を実現、クライアントからの修正を即座に反映することで、大幅な効率化を実現したとのことです。
レブロに関しては、弊社の事例において、「初めて扱ったが、簡易的に3Dモデルで作図したり、意匠図・構造図と設備図の重ね図をつくる時にデータが比較的軽く、さらにCGを使った納まり調整がし易いソフトだ」と評価していただいています。

本プロジェクトの大学病院は約7万平米、地上8階、地下2階で、部屋数は3,000室あり、従来の建築図がまとまってから設備プロット図を作成する作業方式を採ると、修正があった場合にとても大変な作業となるが、ヒアリング時に即座に修正し、打ち合わせ終了後に図面によってクライアント・関係者と合意形成ができたため、省力化に非常に効果があったと振り返られました。

他に取り組んだ例として、
・設備諸元を意匠BIMモデルに入力して、日々変化するプランニングと設備計画の整合性を高める例
・意匠、構造BIMを連携し、梁下天井懐が一定以下になる場所を可視化、設備が納まり検討をする前に検討をする例
・意匠BIMモデルに設備が要望する内装・外装仕上げのルールを採用し、労力を要する躯体負荷計算の作業を大幅に短縮する例
などをご紹介されていました。

こうして”BI”が入ったモデルを利用して基本設計段階から干渉チェックを行い、クリティカルな箇所を早期に発見し、納まり検討を早期に実施。モデルへのフィードバックを情報共有してデジタル化し、プロジェクト関係者へデジタルリレーをすることで不整合を防止できたことが、非常に良い点だったとのことです。

鉄骨の屋上架台要求も、建築架台を設備が入れて建築に戻し、フィードバックをもらって配管も納まり検討する、といったやりとりをデジタルリレーし、統合モデルによる整合性確認を繰り返して、実施設計進行中にモデルを高度化できたとのことでした。

 

デジタルリレーへのチャレンジ

これまでのプロジェクトでしばしばあったこととして、「BIMに前向きな一部の設計者」が基本設計ではBIMを利用していたが、実施設計では一部しか残らなかった、ということがあった。
そこで”BI”を使って、その結果が作図に活きるのであれば、使いたい人が増えると考えた、とのことでした。

ただし、設備として必要な与条件を建築モデルからアウトプットできるように構築するなど、建築にも協力してもらわないといけない。そのために、設備設計がなにをやっているか、例えば面積が変わったらすぐ機器まで変わってしまうことなどを説明し、デジタルリレーの意識を持ってもらいたい――

「ほしいのは天井高と面積、たった2つだけもらえれば技術計算ができる、そこから機器リスト作成、機器のサイズが決まって初めて情報が返せる」と説明したところ、それだけでいいなら協力する、と心を動かしたことが印象的だったと振り返られました。

さらにそこから、機械と電気の長年の課題である動力連携についても、部屋面積、天井高の情報を連携したことから課題解決につながったとのことでした。

このように、”M”に移る前の”BI”を整理することで効率的になり、不整合を防ぐことをしたいと考えて、デジタルリレーにチャレンジした、これがやりたかった、と強調されていました。

 

まとめ

社内では、「長けているメンバーがいたからできたのではないか」、「特別なスキルが必要なのではないか」と思われていたが、
そんなことはなく、浅川氏自身もBIMソフト利用に関しては初心者のレベルで、BIMの経験があるメンバーも、設備に関しては0人で、
ベンダー、BIMオペレーター、協力会社に聞くなど、試行錯誤して失敗も繰り返しながらやり遂げたとお話しされていました。

経験の少ないメンバーで、なぜできたのか。実はBIMモデルを作成するプロセスとは2次元作図とほぼ同じで、変わったのはBIMオペレーターとデータ管理者がいて、設計者はそれに対して何をしなければいけないか、思考整理をした結果を共有しただけで、それ以外は変わっていないとのことでした。

まだまだBIMでやりたいことはたくさんあり、本プロジェクトも施工段階に入っていて、施工者にどうデジタルリレーを繋いでいくか、共にチャレンジ中で、FMに向けた転用についても検討している最中とのことです。

まとめとして、もっと”BI”をやってみようと思う方が増えれば、ベンダーを含めて設計の質を向上していくことができていき、
BIMをもっと活用できる未来にリレーをつなげられる、と期待を込めて、「BIMの将来を明るく楽しいものにしたい」と、今回の発表を締めくくられました。

 

パネルディスカッション『BIMデータ連携の広がりと総合建設業の経営戦略』

パネルディスカッションでは、総合建設業でそれぞれBIMを推進する5名がパネリストとして登壇し、各社の取り組みやこれからの業界についての思いを語りました。 

パネリスト:
岡野 英一郎 氏[大林組 常務執行役員 DX本部長]
伊藤 仁 氏[鹿島建設 専務執行役員]
山﨑 明 氏[清水建設 常務執行役員 建築総本部 生産技術本部長]
廣瀬 淳 氏[大成建設 エグゼクティブ・フェロー デジタルプロダクトセンター長]
山口 広嗣 氏[竹中工務店 常務執行役員]
コーディネーター:
池田 靖史 氏[建築家 / 東京大学 大学院工学系研究科 建築学専攻 特任教授 / 建築情報学会 会長]
Archi Future 2022 パネルディスカッション

 

「各社DXを進める上で、あるいは業界全体のDXを進める上で、ハードルだと思うところや苦労する点は?」という問いには、各社が現状維持の保守派や作業者の負担を乗り越えて理解を得ることの難しさをあげています。

鹿島建設の伊藤氏は、まず業界各社協調の難しさを上げ、ついで自社を例に、BIMオペレーターの確保と、度重なる設計変更によって現場が二次元運用をせざるをえないことを問題点してあげました。

これに対し、大林組の岡野氏も、変更の手間によって二次元の図面からBIMへと進んでいかない問題があると同意します。そのうえで、二次元で運用する現状維持では10年後20年後の将来性がないこと、先を見据えてBIMを使う意識改革が必要だと語りました。

また、清水建設の山﨑氏は、「BIMはまだ哲学を脱していない」として、実際に手を動かしている人たちにとってどんな得があるのか見えてこないことが問題だと提示します。そのうえで、BIMによる生産性の向上や顧客に喜んでもらえるといった、成功体験をいかに早く作っていくかが重要だと指摘しました。

竹中工務店の山口氏は、世代の壁や職場の壁といった問題点をあげ、実際に試してもらうことの重要性や、最初のきっかけ作りの必要性を提示しました。

また、大成建設の廣瀬氏は、BIMが手間になると感じている部署に強制するのではなく、BIMを一手に行う集約した部署をまず作り、そこからパスをつなげていく方法を語りました。

パネルディスカッションの最後に、コーディネーターの池田氏は「日本のゼネコン各社でBIMを経営戦略の中央に据えられ、こうした熱い思いを持った役員の皆さんが推進されていることが今日はよくわかりまして、大変勇気づけられました。ぜひともこれからも皆さんでリーダーシップをとっていただければと思います」と締めくくり、総合建設業においても、BIMが確実に進められていることに期待を寄せました。

 

テクニカルフォーラム

Archi Future 2022 テクニカルフォーラム受付
Archi Future 2022 テクニカルフォーラム

 

2022年は2本のテクニカルフォーラムを行い、多くのお客さまにお越しいただきました。二つの講演を連続でご覧いただいたお客様も多く、時期バージョンにおける期待値の高さを感じました。

 

『DX時代の建築設備・Rebro(レブロ)の進化と深化』
―作図作業の手分けから自動作図まで―

NYKシステムズ 取締役 開発部 部長 小倉

テクニカルフォーラム【C-5】では、当社取締役 開発部 部長の小倉が「DX時代のレブロの進化と深化」をテーマに、以下3つのトピックで次期バージョンの機能や、今後に向けた取り組みをご紹介しました。

・CAD作図とBIMモデリングの隙間を埋める、次期バージョン「Rebro2023」の新機能
・DXを進めるために、他社ベンダー様・メーカー様と進めている取り組み
・省力化への足がかりとなる「自動作図」の取り組み

テクニカルフォーラム【C-5】を視聴する

 

『解説!レブロ図面テンプレート【BIMプロジェクトにも即対応可能な設定集】―レイヤー・外部参照からExcelデータリンクまで―

2つめのテクニカルフォーラム【C-6】では、当社営業部 グループ長の川上が、7月に無償公開した「レブロ図面テンプレート」のメリットや設定方法などをご紹介しました。

講演で解説した図面テンプレートのデータやマニュアル、解説動画は、以下リンクからご覧ください。

レブロ図面テンプレート データ・マニュアル レブロ図面テンプレート 解説動画

テクニカルフォーラム【C-6】を視聴する

NYKシステムズ 営業部 グループ長 川上

 


講演と同内容のアーカイブ動画を、当社サイトにて公開しています。当日会場にお越しいただけなかった方も、もう一度ご覧になりたい方も、ぜひご視聴ください。

 

当社ブースの様子

Archi Future 2022 NYKシステムズブース
Archi Future 2022 NYKシステムズブース
Archi Future 2022 NYKシステムズブース

 

ブースには多くのお客さまに足を運んでいただき、デモをご覧いただきました。

「Rebro2023」で実装予定の「図面の切り出し・統合」では、複数人での同時作業を行うための図面の切り出しや統合、接続の整合性確認といった機能をご紹介しました。

これまで分業での作図にお悩みだったお客さまからは、「それぞれ描いて統合するにしても、今までどういったやり方が良いのかわからなかった。使ってみたい」と、今後のワークフロー改善に期待する声をいただきました。
レブロ読み込みで切り出した図面を統合し、ルート結合するデモでは、「系統が繋がるのはすごい。便利になる」といった省力化への期待の声もいただきました。

「衛生配管の自動接続」については、選択した機器の衛生配管を自動で接続する機能を紹介しました。実機でのデモでは詳細にご質問いただいた方もいて、基準高さなどのルールを設定でき、合流・分流を選択して作図ができることに「そこまで設定できるなら使い勝手がよさそう」との声をいただきました。

 

あらためまして、テクニカルフォーラムをご覧いただいた皆さま、また、当社展示ブースをご覧いただきました皆さまには、厚く御礼を申し上げます。