レブロ活用事例

導入の決め手はBIMへの適応力
ビッグデータにも対応できる処理能力で
30社超の施工図面をスムーズに統合

株式会社大気社は、一般施設に加え半導体、医薬品の工場・研究施設のクリーンルームなどの空調設備の設計・施工、さらに国内外自動車メーカーの大型塗装プラントの設計・施工を中心に、最近では農業分野である業務用レタスなどの量産実証を行う自社工場まで広範囲に業務拡大を進めている。
今回取材したのは、国内で注目を集めるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(JASM)の半導体工場。かつて世界市場を席捲した日本産半導体復権の期待も込められるプロジェクトだ。その中で、大気社の業務領域の中核を成すクリーンルームなどの空調設備の設計・施工分野の事例となる、施工図面の統合作業をメインに取材した。同社が中心となって進められたこの現場で、必要不可欠な機能性を発揮したBIM対応建築設備CADレブロについて、現場でのリアルな体験を交えてその効果を伺った。

プロジェクト概要とレブロ導入

最大規模のプロジェクトがスタート

 今回のJASM半導体工場の設計・施工は、大気社にとってもこれまでにない最大規模のプロジェクトであった。同社代表取締役社長の長田雅士氏も「クリーンルームサプライヤーとして、当社の技術力と機動力を示し、存在感をアピールする絶好の機会」と捉えていた。2022年4月から立ち上げメンバーとして作図チームの組織編成やインフラ整備、品質管理を担った湯浅氏は次のように語る。

大気社の役割

 「施主が台湾企業であり、当然ながら初めての仕事であったため、生じた課題を早期に解決するために、きっちりと正確な施工図を作成し、施工サイドに早めに引き渡すことが短い工期を全うする必須条件でした。当社がクリーンルームの中心的な設備を担っていたこともあり、建設を請け負う鹿島建設さんをはじめ他の設備工事会社との調整作業も、当社が中心となって、やはり早め早めを心がけて積極的に主導しました。アプリの活用でも当社が一歩進んでいたという事情も、スムーズに運んだ要因だと思います。特に現場における工事参加各社との施工図の統合には神経を遣いましたが、そうした意識があったからこそ大きなトラブルもなく順調に進められたのではないかと思います」(湯浅氏)。

BIM適合性が決め手

 この図面統合作業に使用するCADの選定も湯浅氏に一任されたが、そこでレブロを選定したのはどのような経緯であったのか。
「設備CADのなかでは、レブロがBIMへの展開に最適であるという認識を持っていたので、初期段階からレブロを使用する構想がありました。着任時、当現場では他社製のCADソフトが使われていたのですが、鹿島建設さんがレブロを使用されていたこともあり、当社でも「レブロでいきます」と導入を提言しました。このとき(後述の)Nexceed(ネクシード)が開発する施工管理プラットフォーム『BIMXD』の活用も視野に入れていました」(湯浅氏)。

 

施工図面統合におけるレブロの活躍

30社超の関連業者との連携

 こうしてレブロの導入も決定し、組織やインフラの整備が完了した後は、施工図の作成を急ぎ行い、現場での施工図の統合などの調整作業が、井川氏を中心に日々繰り返されていった。大気社が手掛ける領域は、クリーンル―ムの空調設備だけでなく、生産排気、熱源設備の一部まで広範囲に及んだ。前述の通り、同社にとっても未経験の環境下におけるスタート時の状況について井川氏はこう語る。
「レブロの習熟度では当社が最も進んでいたとはいえ、30を超える関連業者の数でしたので、各社の図面をまとめる作業は、目の前で次々に生まれる課題に突入していく感覚でした。当初は規模が大きすぎて全体が見えず、各社の動きも把握できない状況からのスタートで、とにかく皆に声をかけることから始め、施工図の集約・統合を繰り返し行いました。各社がそれぞれダクトや配管を作図しており、その作図すら遅れがちでなかなか揃わない状況でしたが、レブロを使って3Dで納まりを確認しながら、関係者間で対応方法を協議していきました」(井川氏)。
 レブロの利便性が関連業者に徐々に伝わってくると、大気社が図面を統合しようとすると各社が自然と集まるようになり、レブロの注目度は日増しに高まっていったという。それに呼応するようにCADを既存のものからレブロに切り替える設備工事会社が広がっていく。

 

現場主導の実践的アプローチ

 当初、大気社のプロジェクト室でレブロの操作経験があるのは井川氏のみでライセンスも一つのみ。そんな状況であったが、ライセンスを増やしつつ、若手を中心にレブロの基本操作を学ぶ講習会を2回開催し、不明点があれば井川氏やNYKシステムズのサポートに確認しながら、現場でトライアル&エラーを何度も繰り返して操作が習得されていった。まさに練習なしの実践で習熟度を増していったのである。
 井川氏は、「他のCADソフトと違って現場で生きる機能が豊富なので、その分、基準作りが必要になる」と判断。そこで同時に、フォルダの統一や外部参照、名称の設定などデータ共有を円滑化する基準作りも進めていった。井川氏は、このようなレブロの学習過程を次のように表現した。
「言い換えてみれば、普段使っている言語が置き換わるようなイメージなので、他の設備CADの使用経験があればレブロが初めてでもすぐ理解でき、使えるようになります。もちろん最初はミスの連続でしたが、その分『この部分をこうしたい』という具体的な質問が多く、まさに言語の辞書を引くような感じでした。やはりネットで検索するよりも、早く覚えて使いこなしている人に訊くのが一番早かったようですね」(井川氏)。

 

3D処理能力とBIMXD連携のメリット

3Dモデルが言語の壁を解消

施主の台湾人スタッフが、いつの間にかレブロのCG操作を覚えていたことが分かり、レブロのCGを通じて意思疎通が図れたというエピソードがある。
これが現場での合意形成にも寄与するレブロの操作性の良さを象徴しているが、井川氏は、言語の壁を越えた3Dの効果について次のように語る。
「台湾人スタッフに『この配管はなぜこうならないのか』と言われた場合も、3Dモデルを見せながら理由を説明するとイメージが湧くので納得してもらえることもあります。言葉ではうまく伝わらないと判断され、画面を直接指して改善できた場面もありましたが、こちらも画面を通して提案し、改善に結びついたケースもありました。ある程度は英語でも伝えられますが、レブロはそれを補完する一つのコミュニケー
ションツールになっていましたね」(井川氏)。

▲CGを利用した打ち合わせ風景

▲CGを利用した打ち合わせ風景

 

高性能な3D処理

短期間で予想した以上に活用が広がったレブロだが、大気社にとって最大規模となった今回のプロジェクトにおいて、レブロは実際にどのような効果を生んだのだろうか。井川氏が1番目に挙げたのはレブロの完全3Dエンジンとその処理能力だった。
「3D化の処理が想像以上に速いですね。他社のCADでは、この現場規模だと1フロアの表示が限界ですが、レブロは建物全体をワンモデルで作成可能な上、ビッグデータを見据えたモデリングでも支障なく扱えました。3Dモデルを見ながら、特定の箇所を注意書きして保存できる『シーン登録』の機能はかなり有効でした【図1】。先ほど話した通り、3Dモデルによって、直接施主に確認を取れたのでスムーズに運べましたね。レブロのCGで竣工検査まで行っていたほどです。

▲【図1】「シーン登録」のイメージ、PDFやBCF形式ファイルにて保存可能

▲【図1】 「シーン登録」のイメージ、PDFやBCF形式ファイルにて保存可能

 

また、データを統合した際に、どの設備事業者が作成したデータなのかをプロパティ情報で特定できるため、煩雑な確認作業を行う必要がなく、作業効率アップにもつながりました」(井川氏)。
続いて、2023年3月から井川氏の業務を引き継いだ川部氏は、レブロの機能から表示範囲を指定できる「クリップ」機能の有効性を語ってくれた。【図2-3】
「引き継いだ時点では、調整事項が残っていたのでレブロの諸機能を使って対応していました。そのなかで感じたのは、施工図面が更新されていくとデータ量が大きくなるため、ファイルを開くだけでも時間がかかって大変だということです。そこで、クリップで範囲を絞り込むことでスムーズに図面を表示できるため、よく利用していました。レブロは機能が充実していて奥が深いため、今後、竣工図の段階に入るとまた違う機能が役立つかもしれないと期待しています」(川部氏)。

▲【図2】作図や確認時に必要な箇所へのクリップ設定、不要な箇所を非表示にできる

▲【図2】作図や確認時に必要な箇所へのクリップ設定、不要な箇所を非表示にできる

▲【図3】作図や確認時に必要な箇所へのクリップ設定、不要な箇所を非表示にできる

▲【図3】作図や確認時に必要な箇所へのクリップ設定、不要な箇所を非表示にできる

 

前述したように、湯浅氏にとって、前述した「BIMXD」の活用も構想にあったため、BIMXDにつながるような図面の描き方やプロパティの渡し方を実際に作図するスタッフに伝えていた。そうした取り組みも功を奏し、実際に実感できた効果を次のように語った。
「進捗管理に使えたのが効果的でした。レブロから出力した図面をBIMXDのブラウザやiPad上に3Dで表示するのですが、施工完了部分に着色して分類でき、さらにダッシュボードで進捗状況がグラフ化されるので『今月は何%完了した』などと進捗状況を確認しながら管理を行えました。これらがスピーディに実行できたので、プロジェクト全体を把握するために非常に効果的でした」(湯浅氏)。【図4-5】
また、BIMXDの活用によって現場での作業がいかに変化したかについて、湯浅氏は次のように続けた。「タブレット上で3Dモデルを見ながら現場で施工管理をする構想は、5年前くらいからありました。施工図は、プロパティが入った3Dモデルで描くのですが、職人さんや施工管理のメンバーが現場で実際に扱っていたのは、紙ベースかCADから出力したPDFデータで、言わば2次元のデータしか現場に持ち出せない状況でした。それが、BIMXDを導入したことで、3Dモデルを基に現場で調整し、配管の材質や通り芯からの距離などのプロパティをタブレット上で確認して対処できるようになりました。これらは、想像以上に役立っています」(湯浅氏) 

▲【図4】吊込済のダクトを色塗し、進捗状況を可視化

▲【図4】吊込済のダクトを色塗し、進捗状況を可視化

▲【図5】Microsoft Power BIにて進捗確認も可能

▲【図5】Microsoft Power BIにて進捗確認も可能

レブロ活用の将来展望

 以上のようなレブロの効果を踏まえて、今後の取り組みについて伺った。井川氏は、次のような視点から、さらなる意欲をみせた。
「これまで工期優先で実現できていないのですが、プロパティ情報の入力をもっと充実させて、より有効に活用してみたいと考えています。個別に調べなくてもBIMデータから関連するすべての情報を把握できるようになればいいですね。また、施工図に修正を加える場合、複数のアカウントで同時に作業を行えるようになると、より作業がはかどるのでは、と思います」(井川氏)。
これには川部氏もうなずいた。
 また、川部氏は、運用面の改善について言及した。「今回のようにビッグデータを見据えたBIMを扱う場合でも、不要な情報を削除するなど、ユーザーの工夫次第でデータを軽く扱えるようにする手段はあると感じています」(川部氏)。

全社的な活用拡大への期待

 湯浅氏は、今後の展望についても次のように語ってくれた。
「私は、全国の現場でレブロやBIMXDなどのツールを紹介しているのですが、ある現場ではレブロを活用して発注管理や納品管理の取り組みを始めており、私が担当する現場でも取り入れてみたいと思わせるアイデアでした。また、将来的にはロボット施工(自動施工)につながるBIMの活用を視野に検討を進めているところです」(湯浅氏)。
「最後に、本現場に関して言えば、レブロを使っていなかったら、とても工期中に完成できなかったと感じます。全国でもっと利用者が増えると良いですね」と3名の評価が一致したのが印象的であった。

 

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CORPORATE PROFILE

株式会社大気社

本社 東京都新宿区西新宿八丁目17番1号(住友不動産新宿グランドタワー)
設立 1913年
代表者 代表取締役社長 長田 雅士
資本金 64億5,517万円
従業員数 個別:1,729名、連結:5,174名 (2024年9月末現在)
事業内容 下記の諸設備・装置の設計・施工・監理および関連機器の製造加工・販売・輸出入
・空気調和設備、換気・乾燥設備、冷凍設備、燻蒸設備
・クリーンルームおよび関連機器装置
・給排水・衛生設備、防火防災装置
・地域冷暖房施設、コージェネレーション設備
・塗装プラント
・排気・廃水・廃棄物処理装置
・電気・計装設備
・建築工事の設計・施工・監理

 

2025.01.15


※「Rebro®」は株式会社NYKシステムズの登録商標です。 その他記載の商品名は各社の商標または登録商標です。
※記載事項は予告なく変更することがございます。予めご了承ください。
※本事例で記載されている内容、部署名、役職は取材時のものです。