レブロ活用事例

計測~現況図作成を75%省力化!レブロ連携によるリニューアル現場革命
点群処理×設備CAD連携への挑戦

わが国を代表する設備工事会社の1社である東洋熱工業は、高度な施工品質と共に先進技術への果敢な挑戦で知られている。 その中でも、近年特に注目を集める取り組みの1つが、改修工事における生産性向上の切り札と言われる3Dレーザースキャナーの活用だ。 2016年1月、同社はこのチャレンジのカギとなる点群処理×設備CAD連携を実現する「レブロリンク」を共同開発した。

現況図がない建物のリニューアル 事前調査の生産性を向上させるには?

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「古いビルなどの設備リニューアル案件で現況図がないケースは、実は珍しくありません。 仮に紙の図面が残っている場合でも、部分改修については断片的な図面があるだけで、誰も最新の全体像がつかめない現場がほとんどなのです」。 苦笑いを浮かべながら語るのは、東洋熱工業の東京本店工務技術部の渡邉秀夫氏である。 渡邉氏は長年にわたり第一線の現場でさまざまな設備工事に取り組んできた、設備工事のプロである。 現在では、全国の現場技術者たちを指導し、サポートする立場にある同氏だが、必要があれば率先して現場へ飛んでいく姿勢は変わらない。 「だから、そういう現場ではまず現地調査して図面を作り直すことから始めます。スケールを持って現場に入り、いちいち人の手で計っていくのですよ。 中には配管密度が高い現場や、やたら階高の高い現場など、危険で計りきれない箇所も珍しくありません」。

結果、その作業には膨大な手間と時間が割かれる。それだけで1週間以上かかってしまうこともあり、 採寸漏れや採寸ミスでやり直しになることも少なくなかった。そしてさらなる問題は、こうした現場の多くが バブル期に大量に建設されたビル群であった点だ。それらはいま、一斉に更新時期を迎えており、 裏を返せば今後の需要拡大が見込める一大マーケットでもあった。 これにいち早く対応し、事前調査作業の生産性向上を図ることは、きわめて優先度の高い課題だったのである。

たった1人のこだわりが切り開いた3Dレーザースキャナー活用への道

「そんなときに目にしたのが、米国の3Dレーザースキャナー活用事例です。 医療や機械メーカーの例でしたが強い興味を感じました。設備でも使えるのではと思ったのです」。 早速、渡邉氏は業界団体の会合でこの事例を報告したが、同業の関心は思いのほか低かった。 中には実際にレーザースキャナーを試用中の企業もあったが、レーザースキャナー自体が高額だったこともあり、 実用化は難しいという結論が大半だったのである。だが渡邉氏は諦めなかった。 別のレーザー機器を現場に持ち込んで3Dスキャンを試みるなど独自の研究を続行。ついに2013年、 3Dレーザースキャナーの導入にこぎ着けたのである。「初めて3Dスキャナーを見た時からすごく面白いと感じ、 以来ずっとこれを現場で使うことしか頭になかったのです。ただし同時に、実際に現場で活用していくには、 そのままではやはり難しいと感じたのも事実。活用するには、何かプラスアルファの開発が必要だったのです。 ……そこで、スキャナー購入の目処が付いた所で、すぐに技術研究所に協力を依頼したのです」。
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点群データと設備CAD 連携が3D レーザースキャナー活用のカギ

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「その2013 年は、私自身がちょうど技研に配属されたばかりの年でした。 そして最初に与えられた研究テーマが、3Dレーザースキャナーの活用だったのです」と、 微笑を浮かべたのは、東洋熱工業の技術統轄本部技術研究所の研究員、三浦貴広氏である。 技術研究所は東熱独自の技術開発をミッションとする部署であり、先端的かつ基礎技術的な研究テーマを扱うことが多い。 その意味では渡邉氏が持ち込んだ「3D レーザースキャナーの現場での活用」は、やや異色なテーマだったと言えるだろう。 「技研にとって、ある意味チャレンジングなテーマだったかもしれません。 そのことは、熱流体が専門だった私にとっても同様で……正直、最初は3Dレーザースキャナーというもの自体よくわかりませんでした。 でも自分なりに調べて理解が進むにつれ、徐々に面白くなっていったのです」(三浦氏)。
そのようにして始まった三浦氏の研究は、きわめてオーソドックスなスタイルで進められていった。 まず3D スキャナーを使ってさまざまな測定テストを行い、 それが「実際にどんなことがどこまでできるのか」を見きわめていった。 しかし、現場で使用するにはやはり多くの問題が浮き彫りになった。 特にレーザースキャンによって得られる点群データは、データサイズが大きすぎて非常に扱いづらく、 現場運用の大きなネックとなっていた。

「やはり点群データをCAD まで持っていって、扱えるようにするしかありません。 そこで、いろいろテストしてみましたが、なかなか上手くいかない。 特に課題になったのはデータ連携で、既存の設備CADは、どうしても3Dスキャナーの点群データを上手く読み込んでくれませんでした」。
このような経緯を経て、いったんは他社と同じく「実用化は困難」という結論になりかけた… が、そんな行き詰まりの状況を変えたのが、そもそもの仕掛け人だった渡邉氏だ。 建築設備業界のエンジニアとして長いキャリアを持つ渡邉氏は、 その幅広いネットワークを活かした提案を行ったのである。 すなわち、最大の課題となっていた「点群データによる3Dレーザースキャナーと設備CADの連携」の実現のため、 社外企業の協力を得ようというのである。渡邉氏はその協力先となる候補企業として、 点群処理ソフトメーカーや設備CADメーカーなど複数を検討。 最終的に同氏が選んだのが、BIM 対応設備CAD「Rebro(レブロ)」のNYKシステムズだったのである。
「私が付合いのあるCADメーカーは幾つかありますが、中でも開発陣が若く、頭が柔軟で、レスポンスも 早いNYKシステムズに声をかけました。そういう開発でなければ実現は難しいと思ったのです。 となると、やはりNYKシステムズしか思い浮かびませんでした」。

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点群処理ソフトと設備CADを連携!「レブロリンク」共同開発へ

依頼を受けたNYKシステムズは、まず現場へのリサーチによる情報収集から着手した。 他サブコン各社含めた現場を広く調査し、3Dレーザースキャナーの活用状況に関するデータを集めていったのである。 一方、渡邉氏らは、もう1つのカギとなる点群処理ソフトの選定を進めていた。 「InfiPointsを知ったのは、幾つか試用し決定しかけた時でした。触れてみてすぐに、“すごい”と思いましたね」。 そう語る三浦氏を驚かせたのは、点群データを3Dモデルへ自動変換するスピードや、 配管をエルボまで含め自動抽出する機能だった。いずれも他社製品とは一線を画すものだったのである。 「開発元のエリジオンはNYKシステムズと似た気質を持ち、製品に手を加えることを嫌がらず積極的に協力してくれました」(渡邉氏)。 実は、同社はもともと製造業を中心に展開してきたメーカーで、建設業界への展開は考えていなかったのだという。 「それでもエリジオンは私たちの提案に快く応えてくれました。同社にとって新分野開拓のチャンスでもあったのです」(渡邉氏)。 こうして2014年春、東洋熱工業とNYKシステムズ、エリジオンは、InfiPointsとレブロの連携を可能にする 「レブロリンク」の共同開発を開始したのである。

より早くより正確に―可能なかぎり自動化を目指す

渡邉氏・三浦氏らが構想した、3Dレーザースキャナー× InfiPoints×レブロによるデータ連携の仕組みを紹介しておこう。 このソリューションは、以下のような流れでデータ連携を図ろうというものだ。

  1. 3Dレーザースキャナー:現場をスキャン
  2. InfiPoints:得られた点群データをモデリング
  3. レブロリンク:生成された3Dモデルを専用ファイルでレブロへ
  4. レブロ:レブロリンク経由でデータを取り込み、各用途・材料・保温厚等の情報を付加
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「こうした構想のもと、両社に多くの要望を出しましたが、1 番のそれはできる限りの自動化です」(渡邉氏)。 すなわち上記3.4.はモニタを見ながら操作するやり方では時間がかかりすぎ、 ヒューマンエラーのリスクも避けられないことから、これを避けるため、できる限りの自動化が最大の課題とされた。 しかし、それは容易に解決できるものではなかった。 「業界での発表で同業各社の反応が悪かったのも、その難しさが予想できたからでしょう。 私も半信半疑でしたが、挑戦する価値はあると思ったのです」。
渡邉氏らの提示した方針に基づき、 3社で打ち合わせて仕様が決まると、いよいよ開発が始まる。作業は着々と進められたが、 途中、東洋熱工業に対しては段階ごとにテストプログラムが提供された。 渡邉氏らはこれを使って実案件で課題を抽出。フィードバックしていったのである。
「特に問題が多かったのはデータ取り込みに関わる部分です。たとえば水平垂直や連続性、角度等に関わる誤差、 管サイズが途中で変化するなど、スキャン段階の誤差をいかに補正するかが重要な課題となりました」(渡邉氏)。
まさに現場の声をダイレクトに反映させながら開発は急ピッチで進み、レブロリンクのβ版は約1年後の2016年1月に完成した。

最新版「Rebro2016」のアドインとして2016年5月30日、リリース

 「早かったね、本当に思っていたよりずっと早く完成した。NYKシステムズのこういう所が好きなのですよ」と渡邉氏は言う。 一方、三浦氏はそのβ版の仕上がりに大いに驚かされたという。 「実際に見るまでは、Infi Points の3D モデルから“ 配管だけでも レブロ で認識できれば” と思っていましたが、 β版はずっと先を行っていました。エルボまで捕捉でき、2Dオルソ画像に圧縮して使えるなど、 期待以上に良いものが完成していたのです」(三浦氏)。 このβ版の仕上りを確認すると、渡邉氏らはすぐこの新ソリューションをリニューアル案件の実現場へ投入し、 実運用を開始した。レーザースキャナーで計測し点群データを採取。前述した通り Infi Points からレブロへとデータを受け渡し、レブロで建築設備モデル=BIMモデルへ仕上げていったのである。 もちろんBIMモデルは改修工事用の新設部分作図や拾い集計機能で物量把握など、 多様な2次活用へ応用され、その過程で発見された問題点や課題は、ただちにNYKシステムズにフィードバックされた。 こうしてさらに数カ月のブラッシュアップを経て完成したレブロリンクは、最新版レブロのアドインとして搭載。 「Rebro2016」として2016年5月30日にリリースされた。東洋熱工業ではその発売を待たずに レブロ連携ソリューションを現場へ投入。ひと足早く、これを本格的に稼働させている。

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現場の計測から現況図作成までトータル75%もの省力化を実現

「稼働し始めて8~9カ月になりますが、すでに8物件で使用しました。どの現場でも期待以上の効果を 発揮しましたよ」と渡邉氏は語る。同氏によれば、導入効果は、すでに東洋熱工業社内で 噂となっており、運用を担当する渡邉氏のチームへは全国の現場から引き合いがあり、 渡邉氏自身毎週出張している状態だという。レブロ連携の導入効果は、それほど圧倒的だったのである。 「3D レーザースキャナー導入以前のやり方、つまりスケールを使って手作業で測る手法に比べると、 現況図を作る所までの作業でトータル75%も省力化できている、という結果が出ています」(渡邉氏)。 つまり、作業日数は以前の4 分の1まで激減したのである。いうまでもなく、これは机上の計算値などではなく、 実物件で実運用した結果を比較した結論なのだ。 「他社では、3D レーザースキャナーで計測してもデータを設備CAD へ連携できないため、 点群データを見ながら作図している所もあるようです。実は私たちも、当初このやり方を試したのですが、 かなり面倒で……すぐに断念しました。レブロ連携で扱いやすくしない限り、点群データの活用は難しいでしょう」(三浦氏)。 もちろん導入効果は作業効率化だけではない。たとえばレブロによるBIMモデルを2次利用して、 ウォークスルーやリアルな3DCGを駆使した顧客へのプレゼンや打合せ。 あるいは干渉チェック等を用いた精度の高い施工計画の立案など、施工BIMとしての幅広い活用がすでに始まっている。 東洋熱工業としては、リニューアル工事分野の受注拡大へ向けた切り札の1つとして利用を拡げていくと共に、 さらに機能強化を推進していく計画だ。 「欲しい新機能は多々ありますが、まずダクト。このオーダーメイド部材を上手く取り込む機能を 何とかして持たせたいのです。NYKシステムズとエリジオンの開発力に期待したいですね」(渡邉氏)。

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CORPORATE PROFILE

東洋熱工業株式会社

本社 東京都中央区京橋二丁目5番12号
代表者 代表取締役社長 芝 一治
資本金 10億1,000万円
従業員数 809名(2016年3月末現在)
事業概要  空調・換気・排煙・給排水衛生・消防設備等の設計施工・販売・保守ほか