レブロ活用事例

設計、施工から維持管理まで設計施工BIM+BIM-FMで生産性を向上
鹿島建設関西支店が挑む初のフルBIM

大阪ビジネス街の中心地で、新たな超高層ビル「オービック御堂筋ビル」の建設が進んでいる。2020年1月の竣工を予定するこのビルは、地上25階地下2階で最新の耐震・省エネ設備や災害時の緊急設備等を備え、オフィス・ホテル・店舗・ホール等で構成。同プロジェクトを請負った鹿島建設関西支店では、これを支店初のフルBIM案件として設計・施工・維持管理まで一気通貫のBIM活用を展開している。その取り組みの詳細について、同現場事務所の北村浩一郎所長と加藤誠副所長に伺った。

関西支店初のフルBIM挑戦

「お客さまから内示をいただき、設計のスケジュールが見えてきた時は、すでにメンバー間で“フルBIMでいこう”という合意ができていました」。所長として現場を率いる北村浩一郎氏はそう語る。関西支店で管理部門のグループ長を長く務めてきた北村氏は海外視察を通じ、早くからBIMの必要を痛感し、現場への普及に取り組んできた。実際、関西支店でも施工BIMを中心に、実案件ごとのBIM活用は進んでいたが、基本計画から用いるフルBIMは、なかなか実施する機会がなかったのである。そうした背景のなか、北村氏が任されたのが今回のオービック御堂筋ビル新築工事の現場であった。

 

▲オービック御堂筋ビル完成イメージ

「偶然だと思いますが、今回は私だけでなく、現場中心にBIMの普及を進めていた加藤副所長や、設計部門でBIMを推進していた設計部長も一堂に会すことになったのです。そこで、“とにかく一度フルBIMでやってみよう!”ということになりました」。しかし、フルBIMは関西支店としても初めてで、北村氏も「当初、何から始めればいいのか、まったくわからなかった」と話す。そこでまず着手したのが、後にプロジェクト推進の最大の原動力となる「BIM戦略会議」の立上げであった。
「誰もわからないのであれば、皆で考えていこう、というわけです。意匠・構造・設備の関係者を全員集めて“こんなことがやりたい”という方針だけ示し、あとは皆で知恵を出し合っていこう、と決めました」(北村氏)。

 

全員集合!BIM戦略会議

   建設プロセスは、従来規模の大小に関わらず、2次元データが主体となっており、そのデータを、意匠、構造、設備へとバトンタッチしながら『設計図』として作り込み、それを施工サイドへさらにバトンタッチする。建物が完成すれば、それを建物の維持管理部隊へまたバトンタッチする、といった流れである。バトンタッチ形式は、時間を要することと、意思伝達の食い違いから齟齬が発生するリスクがある。施工がスタートしてから解決することも多いという。
「今回はこのバトンタッチ方式でなく、前述の通り、最初から皆が顔を合わせて問題を議論し、座談会方式で改善していきました。集まるのは大変ですが、全員いれば問題解決も早いし、そうして改善し、ルールを決めながらBIMモデルを作り込んでいきました」(北村氏)。このBIM戦略会議は、着工まで月2回のペースで開催され、北村氏らはBIM運用の基盤となるBIMモデルのあり方や活用法を早い段階で決め込んでいった。ある意味、理想的なフロントローディングの実践である。副所長の加藤誠氏はこう語る。
   「関西支店はもともとフロントローディングが活発な拠点で、設計段階から施工担当が早期参画し、設計者と共に仮設計画や施工合理化を反映させる設計図のつくり込みを行ってきました。今回の取り組みも、基本設計から実施設計へ進む流れの中で、フロントローディングを究めるという狙いがまずあり、BIMはそれを促進させるツールという捉え方があったのです」。

基本設計・実施設計段階でのBIM

  「基本計画・基本設計が始まったのは2016年3月。そこから約1年の短期間で、BIM基本モデルを核として、設計データを作り込み、また基本的な設計図は2次元で切り出した図面を利用することも含め、申請や評定までやり抜くことを目標としました」(北村氏)。この規模の建物としてはタイトなスケジュールであったが、BIM戦略会議に基づくBIMの多様な活用が威力を発揮し始める。当初の具体的なBIM活用としては、地下計画の最適化や意匠・構造・設備の整合性検証。また、早い段階で実施設計の細部までを「見える化」することで、実施設計の詳細な調整作業や各種の概算数量の把握なども実現できた。こうしていち早くデザイン・構造が確定すると、そのモデルを基に実施設計が始まる。
   「今回は、建築・構造・設備の不整合調整に留まるのではなく、引渡後のメンテナンスや将来の更新工事計画を踏まえた実施工で利用できる設計・施工BIMモデルを構築する事が最大の目的でした」(加藤氏)。まず、空調・衛生・電気各工種のモデルを作り、さまざまな事前調整後に問題点を抽出。抽出された多くの問題点を、内容の軽重により分類し、建築・構造のプランに絡む重要度の高いものから、BIM戦略会議で対応方針を決め、実施設計へと反映させていった。こうしてBIMモデルをベースに、施工を踏まえた細かな調整を徹底することで、精度の高い設計・施工BIMモデルを仕上げられたと加藤氏は語った。

▲3DCGの活用

   この設計・施工BIMモデルの制作で重要なポイントとなったのが、レブロへの切り替えでした。BIM対応設備CADとしてレブロの採用は決っていたものの、オペレータの確保が遅れていた。プロジェクト進行中での切り替えによる負担も懸念されたが、施工段階での拡張利用や建物管理との連携を計画していたため、属性情報を有するレブロの採用が必須と考えていたのである。「特に全設備を総合的にプロットした総合BIMプロット図の作成に際しては、モデル化されてない部材データも当社で作り込み、属性情報も入力しています」(加藤氏)。それは建物の設備計画総体を一目瞭然で示す、新しいヴィジュアライゼーションでした。「通常、新任の現場担当が着任すると、その現場の空調・衛生・電気図面を、時間をかけて確認する必要がありますが、この総合BIMプロット図なら、非常に短時間で建物概要を把握できます。また、実際にBIMモデルを作るオペレータも、従来理解できないまま機械的に描いていた2Dプロット図と異なり、レブロで作る総合BIMプロット図は、自然に内容が理解できるため精度が向上すると語っています」(加藤氏)。

▲BIMプロット図の作成

着工と共にレブロ導入教育を

   2017年5月。いよいよ着工の日を迎え、BIM運用も現場へ拡がっていった。この時、現場での施工BIM運用の課題の1つとして、再びレブロがクローズアップされたのである。
   「現場で使われる設備CADは他にもありますが、BIMデータをフルに拡張利用できるのはレブロと考えています。特に今回のプロジェクトのBIM運用には、モデルに入力した属性情報の活用が大前提となります。そうなるとやはりレブロが有力な選択肢でした」(加藤氏)。鹿島建設本社もBIM用設備CADとしてレブロを推奨していたが、普及はまだ途上にあり、そのせいもあって、当初は加藤氏も協力会社へのレブロの普及に不安を感じていた。
   「この現場では、設備の協力会社8社にレブロを使ってもらうことになり、各社のオペレータに操作を学んでもらう必要がありました。これにどれだけの時間がかかるのか、正直不安だったのです」。しかしその心配は杞憂であった。総計19名ほどのオペレータは、着工後すぐに立ち上げられたBIM研究会により定期的な講習を受け、短期間でレブロの操作を習得したのである。「レブロは初めての方ばかりでしたが、抵抗なく習得され、すぐ実務で使いこなしてくれました。使い慣れたCADよりもレブロの方が使いやすいという声も多く、特に1つの施工モデルから多くの図面を切り出せるのは大好評でした。通常何枚も描く図面が、モデル1つでフォローできるのですから、評価も当然でしょう」(加藤氏)。


   こうして可能となった施工BIMの本格運用により、同現場では設備協力会社の業務が大きく効率化された。通常、設備は建築検討後に短時間で検討作業することになるケースが多く、就業時間も多くなりがちだ。しかし、この現場では設備協力会社の多くが比較的早い時間で終業し、休日出社もほとんどないという。「実際、BIMのメリットをいちばん感じているのは彼らでしょうね」と北村氏は笑顔で語る。「BIMで着工時前に可能な限り検討が出来ており、決めるべき項目の大半が事前に把握・処理できていると感じる。おかげで着工後の設備関連の検討作業が大きく削減され、流れが確実に変わりました。これが非常に大きかったと感じています」(北村氏)。

BIM拡張利用からBIM-FM連携へ

▲HoloLens

  こうしたBIM運用で現場に余裕が生まれたこともあり、現場ではBIMデータをさまざまな形で拡張利用し、新技術の挑戦に取り組む機会が増えている。
「たとえば仮想竣工済みのBIMデータは、モデルのどこでも切って確かめられます。そこで建て方途中の形状を切って危険認識をさせたり、あるいは現場全体のシミュレーションを活かし、VR体験できる安全教育用コンテンツ等も弊社本社部門と協力して作っています」(北村氏)。また、MR技術の活用という点では、HoloLensを用いた現地ビューアも運用している。

 

これは外壁最上部のサイン等が完成後、現地でどのように見えるか、HoloLensでBIM画像と現地を複合させ、目で見て実物大で確認しようというもの。施主へのプレゼンテーション等への活用が期待されている。また、BIMモデルそのものが工事前の施工図確認等に活用され、協力会社との工事内容共有に威力を発揮したのはもちろんだが、HoloLensを利用した施工アシスト的な活用方法も実験されているという。
   「これは施工箇所の施工用BIMモデルをHoloLensに入れたもので、これを現地で見ることで、そこと重ね合わせるようにして、取り付ける機器やそのスペック等、さまざまな情報をビジュアルで確認できます。施工後の検査等、施工アシストにも使えますね」(加藤氏)。

▲MR技術の活用

   一方、設備協力会社と連携し、レブロのExcelデータリンク機能を活かしたさまざまな取り組みを行っている。工事の進捗管理においては、膨大な数量の部材とBIMデータを紐付けし、現場での納品チェックや設置位置確認、作業進捗確認等をリアルタイムで実行。BIMデータ上に部材ごとの進捗状況をビジュアルで表示し、「工事進捗の見える化」を進めている。
   このようにさまざまなチャレンジを積み重ねながら、プロジェクトは2020年1月の竣工を目指して着々と進んでいる。すでに北村氏たちは引き渡し後の維持管理フェーズでのBIM活用を視野に検討を始めている。例によって、実際にメンテナンスを行うスタッフや各拠点の責任者と、BIM-FM連携の話し合いも重ねており、そこでは設計・施工BIMのデータベースを基に、建物管理業務のエッセンスを反映したBIM-FM連携が構想されている。「工事が終わればBIMも終りということではなく、建物がある限り活用していくことが重要です。『BIMは建物のデータベースです』と。しかも、“こういうことができる”と実際に形にしなければ次に続かないわけですから、そこが私たちの使命だと思っています。まだまだ新しい試みを積み重ねながら、良い建物に仕上げていきたい考えです」と北村所長は締めくくった。

▲工事進捗管理

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CORPORATE PROFILE

鹿島建設株式会社

本社 東京都港区
代表者 代表取締役会長 中村 満義
代表取締役社長 押味 至一
資本金 814億円余
従業員数 7,686名(2018年3月現在)
事業概要 建設事業、開発事業、設計・エンジニアリング事業 ほか
URL https://www.kajima.co.jp/